2009年08月
2009年08月26日
資産家のあなたは、狙われている(13)
昨日、賃貸トラブル解決セミナー、丸一日、講演!
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合計、約6時間の実務者セミナーだったが、久しぶりの賃貸トラブル関係のセミナーだったので、結構、自分自身が楽しめた。
私の著書「賃貸トラブル110番」が、現在、絶版になっており、合わせてオークションでも新刊の10倍以上の価格がついている関係で、意外に人気の高いセミナーとなっている。
昨日は、当社の新任者やマネージャーの熊切なども参加し、懇親会も盛り上がった!
今回も、全国から参加していただき、感謝している。
相続に付け込む、取り込み詐欺!(13)
「中岡不動産、この土地を担保に、4億円近い抵当権をつけて2社から借り入れをしていることになっている」登記簿謄本の乙区欄、甲区欄をめくりながら倉橋は青ざめた。
「おまけに信託登記をした上で、さらに第三者に、所有権移転の仮登記まで済ましているじゃない。」立山弁護士も事情を飲み込んで沈黙した。「こいつら、プロだな」
「それって、どういうことなんでしょうか」山田はその異常さを読み取り、不安そうに言った。「すでに、遅かった、ということですか」
「ま、山田さん、さっき、腹を括って貰ったんだから、やるしかないね」立山弁護士は倉橋と目を合わせて、苦笑いしながら言った。
本件は、権藤の会社と中岡不動産が共同で特別有料老人ホームの許認可の申請を行っており、権藤の会社では、許認可の申請すらできない状況であったものを、共同申請人である中岡不動産が主体的に行っているようであった。従って、山田側から見て中岡不動産は、権藤の会社から所有権の移転を受けていたにしても第三者ではなく、当事者の一方であるとの主張で戦うつもりでいたのだが、実質的には、さらに第三者に転売されようとしている事実がわかった。おまけに、過大な抵当権をつけて、すでに借り入れという形で資金移動は済んでおり、仮に山田が売買契約の無効を主張し、その土地の返還請求が認められたにしても、この借入金を権藤の会社か中岡不動産が返済しない限り、この抵当権の抹消は出来ず、債務不履行が生じれば競売にかけられてしまうのだ。結局、山田側が勝訴したところで、何のメリットもない状態なのである。
ことの事態は、緊急性を要する訳だが、反面、我々が行おうとしている保全手続きによってこの土地を購入した第三者や貸金業者が蒙る損害額は甚大であり、万一、こちらの主張が通らなければ、その損害は、山田に対して請求されうる可能性が高くなってしまったことを意味する。また、そもそも裁判所で、この第三者らが蒙る損害と、山田の父が騙された経緯の過失を比較して、保全手続きを認めないという判断も、充分、ありうることになる。
「山田さん、これを知ったところで後には引けないじゃないですか」倉橋は、山田に言った。「これで彼らの意図はわかった訳ですから、戦うしかないですよ」
この事件では権藤らの行っていた特別有料老人ホームの許認可など、山田の父を騙す為の道具だったに過ぎない。彼らの目的は最初から山田の父を騙し、この土地を転売し、その代金を詐取する目的だったのである。さらに詐欺の手口は巧妙で、転売が遅れようとも、詐欺による利益を確保するために、借入金という形で資金回収を早めていた。騙された山田の父が、この土地の転売先の第三者に対抗できず、さらに抵当権者にも対抗できない法律を活用した、巧妙な詐欺の手口だった訳である。
「きっと権藤の会社は、最後には倒産か破産して、債務の支払いを免れる手口ですよ」倉橋は、言った。「最初からこの権藤の会社なんて、詐欺のために存在している会社でしょう」
世の中には、権藤の会社のように詐欺を目的として会社を設立しているケースは多い。多くの詐欺事件では、必ず「儲かる」話が先行し、その話はいかにも信憑性があるように誤認させる手口が潜んでいる。
よく手品などで使われる方法で、左手に隠しているコインに目を向けさせないように右手で何かを行い、そこに相手の意識を集中させる方法がある。詐欺の手口は、かようなマジックに似ており、今回のケースでは権藤の会社の実態や信用性などに意識を向けない為に、いかにもありそうな儲け話を作りこんでいた。特別有料老人ホームの許認可に価値があり、許認可があれば1億円以上、土地が高く売れるという幻想を植え付ける。そして山田の父の意識を許認可の申請に目を向けさせ、詐欺の実態に気付かないように誠心誠意仕事をしているふりをして時間を稼いでいる。その間、この土地を有利に転売し、利益の最大化を図るという手口である。
また併せて、山田の父が早期に詐欺行為に気付くことの保険として、この土地の評価額いっぱいの抵当権をつけて借り入れを起こし、先に資金回収を図り、その借り入れた金銭は何処かに移動して隠してしまう。そして被害者の山田の父が気付いたときには、適当な理由をつけて、申し訳ないことをしたが、既にお金はないから返せないといって逃げてしまうという結末が待っているだけである。
今回のケースなどは、最初に所有権の移転をするという話なのだから、まずは権藤の会社の業務内容、規模や信用力、資産の背景などを契約前に調べていれば、こんなことにはなっていなかったし、そもそも専門家などに相談していれば今回のようなあり得ない話に乗ることはなかった筈だ。
ただ実際には、詐欺で騙される当事者というものは、いろいろな欲目、目論見に振れて、あり得ない話に乗ってしまうものなのである。
山田の父の場合は相続税納税のために、一度、土地売買で詐欺にあってしまい、その損失を取り返そうと、今回の話に乗ってしまったわけだが、詐欺のケースにおいては、かような損失の取り戻し的な心理状態のときに陥りやすい。
ここで特筆しておきたいのは、詐欺事件の場合、刑事事件で取り扱ってくれる可能性は、極めて低い、ということである。世の中には、多くの詐欺事件が存在しているが、加害者が検挙されて裁かれるほうが稀なのだ。
テレビなどで騒がれている事件などは被害者が多大であり、社会的に容認できないものだけが検挙されている訳で、今回のようないかにも個人的事情で騙され、その被害額が多大であっても「それって、儲けようと思って騙されたんでしょう」という言葉で済まされ、警察も、裁判所も、真剣に取り扱ってくれない。また仮に加害者が捕まった所で詐欺事件の量刑は軽く、すぐに刑期を終えて社会に復帰してしまうから、世の中の詐欺事件は減ることがない。
むしろ詐欺師は、手を変え、品を変え、社会に餌食を探して、浮浪しているのだ。
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2009年08月25日
昨日の朝礼。
「成功へのこころの科学」の解説。
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「なんか、最近、朝礼、長くない?」とは、きっと社員は思っているだろうが、気にせず朝礼を収録している。
どうせ同じ時空間で一日を過ごすのであれば、その時間は共有できるし、この動画の収録によって、他の人には、その動画を見たときに、その時点が現在となるのだから、将来的な思考は、その時点から影響を与えることになる。
これは、すごい時代になったものだと感心している。
私自身、将来構想は既に出来上がっており、インターネットの普及前に想像していたことが現在起こっているのと同様に、将来の予想は容易につく。
ちょっとここでは触れないが、近い将来、私の構想が一般的なものになると思う。
本日、賃貸トラブル処理のセミナーで講師をすることになっており、今日も一日、しゃべり続けることになっている。
では。
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2009年08月24日
資産家のあなたは、狙われている(12)
昨日、相続関係の個別相談。
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お陰さまで、相続対策の個別相談が増えてきている。
現在、個別相談が具現化したときには、プロジェクトを組んで対応しているわけだが、相続対策の場合、毎年、毎年の計画決定が必要なわけで、いろいろ相談しながら解決してゆくしかない。
一昨日は、底地&借地の解決セミナーを行ったわけだが、こちらも、結果として相続対策が絡むことが多い。
失敗しない相続対策。これも、結局、我々プロが介在しなければ解決できない。
本日、みなとみらいオフィスで会議の後、会議と出版校正が続き、明日は、賃貸トラブル処理セミナーを行う。
いやぁ、殺人的な忙しさが続く。
あ、そういえば、プラチナ会員、ゴールド会員の皆さんへ。
30日に、会員限定の「ダイヤモンドユカイ 城ヶ島 遊ヶ崎リゾート プライベートライブ」を行うことになっている。
間もなく、締め切りになり、参加人数が限られていますので、ご希望の方は 0120−177−213 セミナー事業部まで、お申込ください!
では。
相続に付け込む、取り込み詐欺!(12)
「これって、山田さん、リスクが覚悟できます?」その夜、午後9時をまわってから、倉橋、秘書の小林、そして山田と打ち合わせに出向いた立山法律事務所の立山弁護士は言った。「仮差押手続きなど、この権藤の会社が所有しているのであれば問題はないんだけどね」いつものように、弁護士とは思えない明るい態度で不安げな山田に説明した。「この権藤の会社が転売した相手方の会社が、本当に第三者だったら、山田さん、逆に訴えられる可能性あるけど、大丈夫?」
「訴えられるって、どういうことですか」山田は、顔色を変えて言った。
「損害賠償請求です」立山事務所の山川弁護士が立山の隣で解説した。「残念ですが、山田さんは、この第三者に対抗できない立場です」この山川弁護士は、実は秘書の小林の大学時代1学年先輩で、小林は司法試験の一次は受かったものの、二次試験で不合格となり、山川のほうは大学卒業後、しばらくして司法試験をパスしており、偶然、この事件がきっかけで小林と山川は再会することになった。「つまり、この第三者の会社に損害が生じた場合、その損害の賠償を、山田さんに請求する権利が生じてしまうと言うことです」
「そんな、理不尽な」山田は、焦った表情で山川に言った。「騙されたのは、うちの方なんですよ」
「まあまあ、山川先生。法律的なことは、一般の人には理解しきれないですよ」倉橋が、間に入るように言った。
法律とは、無知なものを救わない。
いわゆる知らないほうが損をする世界であり、特に、今回のような詐欺事件の場合、騙された人は非常に不利にならざるを得ないのである。
「先生、それは承知の上です。山田さんに、これから細かな法律を勉強してもらおうとは思っていません。その第三者の会社は、どうも権藤と繋がりがあり、第三者であるとは言い切れない会社ですから、然程、心配はないと思います」
倉橋は、権藤の会社が開発許可の申請をする際、第三者の会社、中岡不動産と連名で申請を行っている書面を立山弁護士に示して説明した。
「倉橋さん、共同で開発許可申請を出しているからって、第三者でない証明にはならないと思うんだけど」立山特有の口調で怪訝な顔で言った。
「いや、先生。実は、この中岡不動産を良く知っているひとから事情は聞いておきました」倉橋は全国で講演活動を行っており、宅地建物取引業協会の実務研修や宅地建物取引主任者の免許更新の講演なども引き受けていたから不動産業者とのパイプは太い。立山の事務所に来るまでの間、あちこちに連絡を取って、必要と思える情報は、荒削りではあるが入手していた。「この中岡不動産って、業務実態は殆どなく、どうも反社会勢力の手下のような仕事をこなしているようです」
「え、そうすると、今回の裁判って、危険ですか」山田が怯えるように言った。
「いや、むしろ裁判で決着をつけたほうが、安全です」倉橋は落ち着き払った口調で、山田を宥めるように言った。「彼らは、さすがに裁判所に乗り込んでくることはないし、この民事事件で組織を動かせばどうなるかは、彼らが1番知っていることなんですよ」
「倉橋社長が、そう考えるのであれば、ま、あとは山田さんの意向ですね」山川弁護士は、事務的な口調で言った。「あとは経済的な問題として、保証金の額でしょうね」
「そこは、裁判所との交渉だろうな」倉橋は、立山弁護士の顔を見て、笑いながら言った。「あとは、先生の交渉力ってことじゃない?」
「ん〜、そうくると思った」立山は、快活に笑いながら「やってみるしかないけど、債権額が多額だから、保証金も多額になると思うよ」と言った。
本件のような緊急性を要する債権を保全するには、債権仮差押命令の申し立てを行うことになる。このような場合は、仮に、相手方に非がないのに債権を差し押さえられてしまえば、今度は相手方に損害が生じてしまうことになるから、裁判所は、いわゆる「踏み絵」のように申立人から保証金と称して、後日、争いになった時の損害の保全を行うことになっている。
「とりあえず、仮差押命令の申し立てだけ、至急、行ってください」倉橋は、立山弁護士に伝えた。「保証金などについては、山田さん側のできる範囲で検討してもらえば良いことです。場合によっては、債権額を減額して調整をとれば良いんじゃないですか」
「ま、そうだよね」あっさりと立山弁護士が言うと、山川弁護士、そして山川弁護士の部下である篠原弁護士に指示を与えだした。「篠原君が本件の窓口で取り纏めをしてください」
「立山先生、それは駄目です」倉橋は、率直に苦情を言った。「本件は、私自身が動くことを約束して受任しています。今回のケースは、普通の裁判ではない可能性がありますから、立山先生自ら動いて頂きたい」
「はいはい、倉橋さんが付いて来ている段階で覚悟はしていますよ」立山は、笑いながら言った。「私と倉橋さんが考えをまとめる。うちは山川、篠原で事務を行い、倉橋さんのほうは小林君が山田さんとの事務的な連絡を行う。こんなんで、どう」
「それなら結構です。この事件、どうも嫌な予感がするんです」倉橋は、今回のような組織的な詐欺事件のシナリオについて、単純なものではないと考えていた。バックが大きければ大きいほど尻尾はつかめない。我々、刑事ではないから、別に事件の白黒をつける必要などないが、同様の手口で全財産を失っているひとの相談にものっていたが、結局、取り返しの付かない結果になっても、相手は、なんら懐が痛まない仕組みが出来上がっているケースが多いのだ。「小林君、さっき頼んでおいた登記簿謄本、入手、できた?」
「あ、はい」あまり整理されているとは思えない分厚い鞄から、4枚の登記簿謄本を取り出し「さっき、出掛けにパソコンで取っておきました」と、立山弁護士と倉橋の間に置いた。
その乙区欄、つまり抵当権等の記載がなされている部分をみて、2人とも目を見合わせた。
倉橋も、立山も、そして弁護士全員、本事件の特異性を読み取り、ぞっとした。
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