2005年05月
2005年05月25日
不動産コンサルタント始末記 8
第8話 方針決定
「先生、これって、どうします?」
港南台のオフィスに戻り、廣瀬が倉橋に言った。
「不法占有にしますか、賃料滞納にしますか。」
「不法占有だと、仮処分が必要だよね。」
本件のように、誰と契約したか分からないような場合、訴訟を起した時点で占有を移転、つまり他の誰かと入れ替わってしまう可能性がある。その為に「占有移転禁止の仮処分」というのをかける必要がある。
ただ、今回の場合、親子で居住していることから、占有移転の可能性は少なく、倉橋は、先ほどの前田京子の話を基に、賃料滞納による建物明渡訴訟に踏み切ったほうがよいと考えていた。
「さっきの彼女、家賃の8万円は認めていたから、多分、争いにはならないと思うなぁ。」
本件については最初から契約書がないから、民法の賃貸借になる。
よく契約書がないから契約が成立していないなどと勘違いする人が多いが、建物賃貸借の場合、貸主と借主の間で異議がなく、その建物の引渡しと賃料の支払いがあれ、建物賃貸借契約は成立する。ただし特約の定めがないから、契約違反を限定し難く、その賃料はその月の月末持参払いが原則となる。
本件のように契約書が存在しなくとも、特約の定めがなく契約違反を指摘し難いだけで、本件のように賃料が明確に滞納しているようであれば、明らかに貸主と借主の間で信頼関係は破壊されているから、契約解除は認められ、滞納賃料の支払いと本件建物明渡しの「債務名義」は取れる。
ちなみに「債務名義」とは「執行名義」ともいい、強制執行ができうる公の文書のことを指すのであるが、通常、賃料の滞納者や契約違反者に対して法的措置を取るようなときは、この債務名義をいかに効率よく取得するかを考え、行動しなくてはならない。
本件では未払い賃料を取り立てるより、この18ヶ月も賃料を支払わずに居住している親子を立ち退かせることの方が重要である。
本件建物賃貸借契約には、連帯保証人など付保していないのであるから、このまま居住されれば被害額は更に膨らむことは確実である。
「じゃぁ、内容証明は入れずに、いきなり訴訟のほうがいいですよね。」
もともと廣瀬も倉橋同様に考えており、早速、訴訟準備に入ることにした。
通常の賃料滞納者であれば、まず配達証明付内容証明郵便で、滞納賃料の支払い督促付の契約解除通知を出し、その後、建物明渡訴訟を提起するのが普通であるが、本件のような18ヶ月もの賃料滞納者においては、訴状到達をもって契約解除通知とすることも可能なのである。
本件建物は、横浜市の戸塚区にあり、被告住所地も同様である為、裁判所は横浜地方裁判所が管轄である。
本件の原告である吉田は、本件訴訟において弁護士を依頼しない限り、その都度、島から出てこなければならない。
「この件は、吉田さんが選択して頂かなければなりません。」
倉橋は、吉田に電話をかけて弁護士を介在させるかどうかを確認した。
「当然、費用に大きな違いが出ます。」
通常、訴訟等を行い、本人が立ち会えない場合、代理人は弁護士以外を選任することはできない。法人の場合は、簡易裁判所であれば社員が代理人認定を取得し、代表者の代わりに裁判所に出頭することはできるが、地方裁判所以上の裁判所では、それができない。
本件の場合、吉田本人が裁判所呼び出しの都度、ほぼ1日かけて島から出てくるか、当職事務所指定の弁護士を依頼するか、その選択が迫られることになる。
「内容は、わかりました。」
吉田は、最初、弱々しい口調で倉橋に答えた。
「先生、弁護士に依頼しないとなると何回くらい裁判所に行くようですか?」
「そうだなぁ、裁判所に2回、差押に1回、強制執行に1回、順調に行けば4回くらいかなぁ。」
当然、相手方が争ってくれば、この回数は計り知れない。
「でも吉田さん、自分でやったことの後始末だから、最後まで自分でやってみたら。」
「実は先日、先生とご相談したときから、覚悟は決めていました。」
父親の退職金で自らの借金を清算した吉田は、なるべく自らの努力で早期解決を図りたいと考えていた。
自分の借金のお陰で退職せざるを得なくなった父親、何の咎めもしない両親に対し、自らの生活を維持する為に弁護士任せにはできないと吉田は考えた。
「何の役にも立たないと思いますが、裁判の都度、そちらに伺うくらいは大丈夫です。もともと死のうと思っていたくらいですから、役場をクビになってもどうということはありません。」
吉田の言葉に、倉橋はちょっと動揺したが「でも先生。心配しないで下さい。公務員なんていうのは、余程のことがなければ解雇になりませんから。」
かくして、倉橋と吉田、そして廣瀬の共同作戦が開始された。
・・・続きは、また、お届け致します!
倉橋隆行の著書「賃貸トラブル110番」はこちら
賃貸トラブル解決のセミナーはこちらから
「先生、これって、どうします?」
港南台のオフィスに戻り、廣瀬が倉橋に言った。
「不法占有にしますか、賃料滞納にしますか。」
「不法占有だと、仮処分が必要だよね。」
本件のように、誰と契約したか分からないような場合、訴訟を起した時点で占有を移転、つまり他の誰かと入れ替わってしまう可能性がある。その為に「占有移転禁止の仮処分」というのをかける必要がある。
ただ、今回の場合、親子で居住していることから、占有移転の可能性は少なく、倉橋は、先ほどの前田京子の話を基に、賃料滞納による建物明渡訴訟に踏み切ったほうがよいと考えていた。
「さっきの彼女、家賃の8万円は認めていたから、多分、争いにはならないと思うなぁ。」
本件については最初から契約書がないから、民法の賃貸借になる。
よく契約書がないから契約が成立していないなどと勘違いする人が多いが、建物賃貸借の場合、貸主と借主の間で異議がなく、その建物の引渡しと賃料の支払いがあれ、建物賃貸借契約は成立する。ただし特約の定めがないから、契約違反を限定し難く、その賃料はその月の月末持参払いが原則となる。
本件のように契約書が存在しなくとも、特約の定めがなく契約違反を指摘し難いだけで、本件のように賃料が明確に滞納しているようであれば、明らかに貸主と借主の間で信頼関係は破壊されているから、契約解除は認められ、滞納賃料の支払いと本件建物明渡しの「債務名義」は取れる。
ちなみに「債務名義」とは「執行名義」ともいい、強制執行ができうる公の文書のことを指すのであるが、通常、賃料の滞納者や契約違反者に対して法的措置を取るようなときは、この債務名義をいかに効率よく取得するかを考え、行動しなくてはならない。
本件では未払い賃料を取り立てるより、この18ヶ月も賃料を支払わずに居住している親子を立ち退かせることの方が重要である。
本件建物賃貸借契約には、連帯保証人など付保していないのであるから、このまま居住されれば被害額は更に膨らむことは確実である。
「じゃぁ、内容証明は入れずに、いきなり訴訟のほうがいいですよね。」
もともと廣瀬も倉橋同様に考えており、早速、訴訟準備に入ることにした。
通常の賃料滞納者であれば、まず配達証明付内容証明郵便で、滞納賃料の支払い督促付の契約解除通知を出し、その後、建物明渡訴訟を提起するのが普通であるが、本件のような18ヶ月もの賃料滞納者においては、訴状到達をもって契約解除通知とすることも可能なのである。
本件建物は、横浜市の戸塚区にあり、被告住所地も同様である為、裁判所は横浜地方裁判所が管轄である。
本件の原告である吉田は、本件訴訟において弁護士を依頼しない限り、その都度、島から出てこなければならない。
「この件は、吉田さんが選択して頂かなければなりません。」
倉橋は、吉田に電話をかけて弁護士を介在させるかどうかを確認した。
「当然、費用に大きな違いが出ます。」
通常、訴訟等を行い、本人が立ち会えない場合、代理人は弁護士以外を選任することはできない。法人の場合は、簡易裁判所であれば社員が代理人認定を取得し、代表者の代わりに裁判所に出頭することはできるが、地方裁判所以上の裁判所では、それができない。
本件の場合、吉田本人が裁判所呼び出しの都度、ほぼ1日かけて島から出てくるか、当職事務所指定の弁護士を依頼するか、その選択が迫られることになる。
「内容は、わかりました。」
吉田は、最初、弱々しい口調で倉橋に答えた。
「先生、弁護士に依頼しないとなると何回くらい裁判所に行くようですか?」
「そうだなぁ、裁判所に2回、差押に1回、強制執行に1回、順調に行けば4回くらいかなぁ。」
当然、相手方が争ってくれば、この回数は計り知れない。
「でも吉田さん、自分でやったことの後始末だから、最後まで自分でやってみたら。」
「実は先日、先生とご相談したときから、覚悟は決めていました。」
父親の退職金で自らの借金を清算した吉田は、なるべく自らの努力で早期解決を図りたいと考えていた。
自分の借金のお陰で退職せざるを得なくなった父親、何の咎めもしない両親に対し、自らの生活を維持する為に弁護士任せにはできないと吉田は考えた。
「何の役にも立たないと思いますが、裁判の都度、そちらに伺うくらいは大丈夫です。もともと死のうと思っていたくらいですから、役場をクビになってもどうということはありません。」
吉田の言葉に、倉橋はちょっと動揺したが「でも先生。心配しないで下さい。公務員なんていうのは、余程のことがなければ解雇になりませんから。」
かくして、倉橋と吉田、そして廣瀬の共同作戦が開始された。
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2005年05月24日
不動産コンサルタント始末記 7
第7話 現地調査
「私、廣瀬吉正と申します。」
倉橋から紹介されて、廣瀬は、吉田の両親と吉田に向けて、名刺を差し出した。
「今回の件は、私が担当させて頂きます。」
廣瀬は、CFネッツの賃貸管理部門を担当している。
倉橋が前職で勤めていた会社でも、倉橋の部下として賃貸管理部門を行っていたから、ベテランの域に達している。倉橋が、本件を廣瀬に担当させようと考えたのは、廣瀬が得意とする強制執行が伴なう明渡訴訟に発展する可能性が強いと察知したからである。
「この男は、自殺死体の処理している最中、ハンバーガーを食べながら報告してくるような奴です。」
倉橋が、廣瀬のキャラクターを吉田と両親に告げた。
「ちょっとやそっとでは、動じない奴ですから、安心して任せてください。」
吉田も、吉田の両親も、不気味なものを見るような目つきで廣瀬に挨拶し、廣瀬は、無気味な目で、にこっと笑った。
その日、倉橋と廣瀬は、吉田の所有するマンションを訪れた。
通常、このように入居者が分からないような場合、入居者を早急に確定する必要がある。
また、その入居者の占有理由も明確にしなければならない。
つまり、賃料を支払って賃借して占有しているのか、賃料を支払わず使用貸借で占有しているのか、あるいは全く不当に不法占有しているのかを明確にしなければ次の手は打てない。
このような場合、占有している本人から事情聴取して証拠を固めるようにするのが鉄則である。
「スイッチは、大丈夫か。」
倉橋が廣瀬に録音機のスイッチを確認させた。
「大丈夫です。」
廣瀬は、ジャケットの内ポケットに秘めた小型のテープレコーダーのスイッチを確認して言った。
「行きますか。」
マンションのインターホンを廣瀬が押した。
「はい。」ぶっきらぼうにインターホンで答えた声は、意外にも若かった。
「何でしょう。」
「恐れ入ります。私、廣瀬と申しまして、このマンション所有者の代理のもの
です。」
廣瀬が慇懃にインターホン口に語りかけた。
「いろいろと事情をお聞きしたいと思いまして。」
間もなく、髪を茶色く染めた高校生らしい女性がマンションの扉を開けた。
「いま、お母さん、出かけていていません。」
嘘ではなさそうな口調で彼女は言った。
「ごめんなさいね。ちょっと教えてもらえる。」
倉橋が、廣瀬に代わって彼女に尋ねた。
「表札が貼ってないけど、お名前はなんていうの。」
「前田。前田はじめ。」
「あ、そう。お母さんは。」
事情聴取の際は、淡々と聞きたい内容を聞き出すようにするのがポイントである。
人間、心理的には、聞かれたことには答えなければならないという、妙な義務感のような心理が生じるものである。
「前田京子。」
「二人で住んでるの。」
「はい。」
「お母さんは、何しているの。」
「何ですか。」倉橋が、その高校生に事情を聞き出していると、後ろから声をかけられた。
明らかに水商売風の女性であった。
「何か、御用ですか。」
「前田京子さんですか。」倉橋は彼女に聞き、続けた。
「私、このマンション所有者から依頼されて参りました、コンサルタントの倉橋といいます。そして彼は、私の部下の廣瀬といいます。」
倉橋と廣瀬は名刺を差し出した。
「ああ、そうなんですか。」彼女は、ちょっと気まずい口調で言った。
「そのうち、誰かがくるんじゃないかって、思ってました。」
「ところで、ここは誰から借りて住んでいるんですか。」倉橋は、率直に聞いた。
「権藤からですか。」
「ええ、でも、権藤さんからは、次の人が決まるまで、住んでいてもいいって言われてました。」
少し、おどおどした口調で答えた。
「賃料はいくらでした。」
倉橋も廣瀬も、瞬間、賃料を払ってなければ厄介だな、と思った。
「こちらは、15万円と聞いているんですけど。」
「ええっ、そんな筈はありません。」彼女は驚いた様子で言った。
倉橋も廣瀬も、このマンションが15万円で貸せる代物とは思っておらず、どうせ権藤が吉田の口座に15万円ずつ偽装して支払っていたのではないかと考えていた。
「最初の約束では、8万円だったと思います。」
「最初の約束って言いますと。」倉橋は、その言葉を聞き逃さなかった。
「いまは、いくらなんですか。」
「最初、2回くらい権藤さんが見えて、8万円ずつ支払いました。」
俯きながら彼女は、恐る恐る話し出した。
「ただ、その後、権藤さんが、ちょくちょく家に泊まるようになって。」
倉橋も廣瀬も、耳を疑った。
「その後は、家賃、払っていません。 .......すいません。」
吉田が所有するマンションの廊下で、そのマンションに住んでいる水商売風の女性から事情聴取しながら、倉橋は、大まかな今回の事件の流れを掴むことができた。
廣瀬は、その女性の豊満な胸の谷間を眺め、権藤とこの女性の情事を想像したのか、にたっと不気味に笑った。
・・・続きは、また、お届け致します!
■■■■■■■横浜講演決定!『アッと驚く不動産投資2005初級編』■■■■■■■■
ここ最近東京都内で行われておりました、CFネッツの不動産投資セミナーを地元横浜で開催する運びとなりました!
横浜にお住まいの投資家のみなさま、これから投資を始めようとお考えのみなさま、この機会にぜひご参加ください!
▼初級編
【日時】 平成17年6月26日(日) 講 演:13:30〜16:30
懇親会:17:00〜 (※別途費用)
【会場】 東京ガス横浜ショールーム
【受講料】 6,000円
●詳細&申込↓
http://www.cfnets.co.jp/cfseminer/s_syousai/0625syokyu.htm
「私、廣瀬吉正と申します。」
倉橋から紹介されて、廣瀬は、吉田の両親と吉田に向けて、名刺を差し出した。
「今回の件は、私が担当させて頂きます。」
廣瀬は、CFネッツの賃貸管理部門を担当している。
倉橋が前職で勤めていた会社でも、倉橋の部下として賃貸管理部門を行っていたから、ベテランの域に達している。倉橋が、本件を廣瀬に担当させようと考えたのは、廣瀬が得意とする強制執行が伴なう明渡訴訟に発展する可能性が強いと察知したからである。
「この男は、自殺死体の処理している最中、ハンバーガーを食べながら報告してくるような奴です。」
倉橋が、廣瀬のキャラクターを吉田と両親に告げた。
「ちょっとやそっとでは、動じない奴ですから、安心して任せてください。」
吉田も、吉田の両親も、不気味なものを見るような目つきで廣瀬に挨拶し、廣瀬は、無気味な目で、にこっと笑った。
その日、倉橋と廣瀬は、吉田の所有するマンションを訪れた。
通常、このように入居者が分からないような場合、入居者を早急に確定する必要がある。
また、その入居者の占有理由も明確にしなければならない。
つまり、賃料を支払って賃借して占有しているのか、賃料を支払わず使用貸借で占有しているのか、あるいは全く不当に不法占有しているのかを明確にしなければ次の手は打てない。
このような場合、占有している本人から事情聴取して証拠を固めるようにするのが鉄則である。
「スイッチは、大丈夫か。」
倉橋が廣瀬に録音機のスイッチを確認させた。
「大丈夫です。」
廣瀬は、ジャケットの内ポケットに秘めた小型のテープレコーダーのスイッチを確認して言った。
「行きますか。」
マンションのインターホンを廣瀬が押した。
「はい。」ぶっきらぼうにインターホンで答えた声は、意外にも若かった。
「何でしょう。」
「恐れ入ります。私、廣瀬と申しまして、このマンション所有者の代理のもの
です。」
廣瀬が慇懃にインターホン口に語りかけた。
「いろいろと事情をお聞きしたいと思いまして。」
間もなく、髪を茶色く染めた高校生らしい女性がマンションの扉を開けた。
「いま、お母さん、出かけていていません。」
嘘ではなさそうな口調で彼女は言った。
「ごめんなさいね。ちょっと教えてもらえる。」
倉橋が、廣瀬に代わって彼女に尋ねた。
「表札が貼ってないけど、お名前はなんていうの。」
「前田。前田はじめ。」
「あ、そう。お母さんは。」
事情聴取の際は、淡々と聞きたい内容を聞き出すようにするのがポイントである。
人間、心理的には、聞かれたことには答えなければならないという、妙な義務感のような心理が生じるものである。
「前田京子。」
「二人で住んでるの。」
「はい。」
「お母さんは、何しているの。」
「何ですか。」倉橋が、その高校生に事情を聞き出していると、後ろから声をかけられた。
明らかに水商売風の女性であった。
「何か、御用ですか。」
「前田京子さんですか。」倉橋は彼女に聞き、続けた。
「私、このマンション所有者から依頼されて参りました、コンサルタントの倉橋といいます。そして彼は、私の部下の廣瀬といいます。」
倉橋と廣瀬は名刺を差し出した。
「ああ、そうなんですか。」彼女は、ちょっと気まずい口調で言った。
「そのうち、誰かがくるんじゃないかって、思ってました。」
「ところで、ここは誰から借りて住んでいるんですか。」倉橋は、率直に聞いた。
「権藤からですか。」
「ええ、でも、権藤さんからは、次の人が決まるまで、住んでいてもいいって言われてました。」
少し、おどおどした口調で答えた。
「賃料はいくらでした。」
倉橋も廣瀬も、瞬間、賃料を払ってなければ厄介だな、と思った。
「こちらは、15万円と聞いているんですけど。」
「ええっ、そんな筈はありません。」彼女は驚いた様子で言った。
倉橋も廣瀬も、このマンションが15万円で貸せる代物とは思っておらず、どうせ権藤が吉田の口座に15万円ずつ偽装して支払っていたのではないかと考えていた。
「最初の約束では、8万円だったと思います。」
「最初の約束って言いますと。」倉橋は、その言葉を聞き逃さなかった。
「いまは、いくらなんですか。」
「最初、2回くらい権藤さんが見えて、8万円ずつ支払いました。」
俯きながら彼女は、恐る恐る話し出した。
「ただ、その後、権藤さんが、ちょくちょく家に泊まるようになって。」
倉橋も廣瀬も、耳を疑った。
「その後は、家賃、払っていません。 .......すいません。」
吉田が所有するマンションの廊下で、そのマンションに住んでいる水商売風の女性から事情聴取しながら、倉橋は、大まかな今回の事件の流れを掴むことができた。
廣瀬は、その女性の豊満な胸の谷間を眺め、権藤とこの女性の情事を想像したのか、にたっと不気味に笑った。
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【日時】 平成17年6月26日(日) 講 演:13:30〜16:30
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【受講料】 6,000円
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2005年05月23日
セミナー事業部よりお知らせ
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フツーの人々の実例を、不動産業界歴21年、11の不動産関連資格をもち
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【著者より】
不動産業界歴21年。一級建築士をはじめ、ファイナンシャルプランナー・
不動産コンサルタント・不動産アナリスト・宅建など11の関連資格を
引っさげて、より不動産投資道を究めたいと5月からCFネッツの
仲間となりました猪俣 淳(いのまた きよし)です。
自分自身も4年前からアパート経営をはじめ、現在横浜市内に
3棟20室を所有。自ら実践したノウハウと、サラリーマン大家さんに
なった12人の方々の実例をまとめた本を出版することになりました。
5/25に全国の書店に並びますのでぜひお求めください。
不動産投資本の決定版(!)と思っています。
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著者:不動産コンサルタント 猪俣 淳(いのまた きよし)
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目からうろこの不動産投資!
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2005年05月22日
不動産コンサルタント始末記 6
第6話 信頼回復
「CFネッツ」は、不動産コンサルタントの倉橋隆行が経営する不動産コンサルタント会社である。
当時倉橋は、この会社と、マンスリーマンションを運営する「月極倶楽部」、不動産関連の研修事業などを手がける「不動産体系研究所」など、5つの会社を経営し、出版物も多く出していた。
その為、自分の会社のマネジメントだけではなく全国的に講演などの依頼も多く、毎日、超多忙な日々を送っていた。
不動産コンサルタント会社という非常に間口の広い商売では、相続対策や土地有効活用などの付加価値の高い仕事をメインで行おうと思っても、そう簡単に仕事がくるものではない。またコンサルタントの仕事は、その個人のキャラクターで仕事がくるケースが多く、名前が売れてこないと仕事も増えない。
倉橋自体は著書も多数出ているし、テレビの出演回数も多いから、人より仕事のチャンスは多い。倉橋としては、CFネッツでこの業務のフランチャイズ展開を行い、ノウハウを提供して多店舗展開を仕掛けるつもりでいたが、時代がまだ早かった。業界には、ノウハウを享受できる人材が、明らかに不足しているのだ。そこで、仕方なしに、住宅新報社などが主催するセミナーの講師や、業界団体の主催するセミナーの講師を引き受け、当面、業界のレベル向上に励むことにし、一時、フランチャイズのシステムを止め、自社の出店の中で社員教育を充実することにしていた。
「倉橋先生は、いらっしゃいますか?」
戸塚は、多忙な倉橋にアポイントを取り付けるため、CFネッツの横浜オフィスに電話をかけた。
「記者の戸塚と申します。」
「あ、戸塚さん。先日は、どうも。」まさかいないだろうと思っていた倉橋が、秘書を通じて電話に出たことに、戸塚は少々驚いた。
倉橋の自宅は、横浜市内の中心にある。
本来であれば、東京の仕事が多いため、新宿のオフィスに出勤したほうが効率的であるが、倉橋は横浜生まれの横浜育ち、どうも東京の喧騒にはなじめず、港南台にあるCFネッツの横浜本部で執務することが多い。
この日も、大型の不動産投資案件の目論見書を作成しているところであった。
「先日は、取材、ありがとうございました。」戸塚の言葉に、倉橋は更に取材の申込みかと考えていたが「実は、先生に助けてもらいたい人がいるのですが。」
「まぁ、戸塚さんの頼みじゃ、嫌とはいえないけど。」
倉橋は、先日、戸塚の書いた記事に、非常に満足していた。
まだ小さな会社であるのに、大手の会社と比較しても大々的に記事に取り上げてくれ、倉橋の考えを比較的正確に伝えてくれていた。だからという訳ではないが、気持ちを汲んでくれた戸塚の頼みであれば、気持ちで応えてあげようと倉橋は思ったのだった。
「で、どんな内容?」
夏も、そろそろ終わりを告げる頃、初老の夫婦と倉橋より一回り下位の吉田がCFネッツの横浜本部に現れた。
「これ、つまらんもんですが。」
ズシッと重い紙袋を倉橋に手渡し、吉田の父が挨拶した。
「いやぁ、そんな気を遣わなくても。」と言いながら、その袋の重さに興味をもち、倉橋が袋を開けると中にはぎっしりといちご煮の缶詰が入っていた。
「へぇ、いちご煮って、缶詰なんか、あるんですね。」
いちご煮とは、うにとあわびでつくった塩味のお吸い物である。
倉橋は、吉田の両親が住む地方に講演に行くと、必ず、焼きかぜといちご煮を食べる。そんな話を先日の戸塚からの電話で話したものだから、きっと戸塚が吉田に話したのだろう。
妙な気を遣わしてしまったことに、倉橋は、少々、恥ずかしい思いをした。
「先生、何とか息子を助けてくれませんか。」
吉田の母が今までの経緯を話し出し、吉田は俯いたまま、隣で話を聞いていた。
ほとんどの内容を、吉田の母が丁寧な口調で話し終えた。
「ん〜、で、何でご両親がついてくるの。」
問題は、吉田のことなのに、何か第三者的に話を聞いている30の半ばを過ぎた吉田に、少々、苛立ちを覚え、倉橋は吉田に言った。
「確かに、いちご煮を頂いたことはありがたいけど、もう独り立ちしたいい大人が、こんな話で両親を連れてこなくても、いいんじゃないの。」
倉橋の両親も健在で横浜に住んでいる。吉田の両親と倉橋の両親の顔がだぶり、倉橋の両親が懇願している姿のように倉橋には映った。
倉橋は、今後の解決に向けての方向性を、概ね両親と吉田に告げ、「本件を引き受ける条件があります。」倉橋は、吉田に向かっていった。
「吉田さんは、両親に借りた金は必ず返すこと。報酬は、分割でもよいから、吉田さん自身が払うこと。そして、今後、一切、両親を巻き込まないこと。」
倉橋は、両親の目の前で、吉田にきっぱりと言った。
「はい。先生の言うとおりにします。」
弱々しい声で、吉田がいうと、吉田の母の目に、薄っすらと涙が浮かんでいた。
・・・続きは、後日、お届け致します!
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「CFネッツ」は、不動産コンサルタントの倉橋隆行が経営する不動産コンサルタント会社である。
当時倉橋は、この会社と、マンスリーマンションを運営する「月極倶楽部」、不動産関連の研修事業などを手がける「不動産体系研究所」など、5つの会社を経営し、出版物も多く出していた。
その為、自分の会社のマネジメントだけではなく全国的に講演などの依頼も多く、毎日、超多忙な日々を送っていた。
不動産コンサルタント会社という非常に間口の広い商売では、相続対策や土地有効活用などの付加価値の高い仕事をメインで行おうと思っても、そう簡単に仕事がくるものではない。またコンサルタントの仕事は、その個人のキャラクターで仕事がくるケースが多く、名前が売れてこないと仕事も増えない。
倉橋自体は著書も多数出ているし、テレビの出演回数も多いから、人より仕事のチャンスは多い。倉橋としては、CFネッツでこの業務のフランチャイズ展開を行い、ノウハウを提供して多店舗展開を仕掛けるつもりでいたが、時代がまだ早かった。業界には、ノウハウを享受できる人材が、明らかに不足しているのだ。そこで、仕方なしに、住宅新報社などが主催するセミナーの講師や、業界団体の主催するセミナーの講師を引き受け、当面、業界のレベル向上に励むことにし、一時、フランチャイズのシステムを止め、自社の出店の中で社員教育を充実することにしていた。
「倉橋先生は、いらっしゃいますか?」
戸塚は、多忙な倉橋にアポイントを取り付けるため、CFネッツの横浜オフィスに電話をかけた。
「記者の戸塚と申します。」
「あ、戸塚さん。先日は、どうも。」まさかいないだろうと思っていた倉橋が、秘書を通じて電話に出たことに、戸塚は少々驚いた。
倉橋の自宅は、横浜市内の中心にある。
本来であれば、東京の仕事が多いため、新宿のオフィスに出勤したほうが効率的であるが、倉橋は横浜生まれの横浜育ち、どうも東京の喧騒にはなじめず、港南台にあるCFネッツの横浜本部で執務することが多い。
この日も、大型の不動産投資案件の目論見書を作成しているところであった。
「先日は、取材、ありがとうございました。」戸塚の言葉に、倉橋は更に取材の申込みかと考えていたが「実は、先生に助けてもらいたい人がいるのですが。」
「まぁ、戸塚さんの頼みじゃ、嫌とはいえないけど。」
倉橋は、先日、戸塚の書いた記事に、非常に満足していた。
まだ小さな会社であるのに、大手の会社と比較しても大々的に記事に取り上げてくれ、倉橋の考えを比較的正確に伝えてくれていた。だからという訳ではないが、気持ちを汲んでくれた戸塚の頼みであれば、気持ちで応えてあげようと倉橋は思ったのだった。
「で、どんな内容?」
夏も、そろそろ終わりを告げる頃、初老の夫婦と倉橋より一回り下位の吉田がCFネッツの横浜本部に現れた。
「これ、つまらんもんですが。」
ズシッと重い紙袋を倉橋に手渡し、吉田の父が挨拶した。
「いやぁ、そんな気を遣わなくても。」と言いながら、その袋の重さに興味をもち、倉橋が袋を開けると中にはぎっしりといちご煮の缶詰が入っていた。
「へぇ、いちご煮って、缶詰なんか、あるんですね。」
いちご煮とは、うにとあわびでつくった塩味のお吸い物である。
倉橋は、吉田の両親が住む地方に講演に行くと、必ず、焼きかぜといちご煮を食べる。そんな話を先日の戸塚からの電話で話したものだから、きっと戸塚が吉田に話したのだろう。
妙な気を遣わしてしまったことに、倉橋は、少々、恥ずかしい思いをした。
「先生、何とか息子を助けてくれませんか。」
吉田の母が今までの経緯を話し出し、吉田は俯いたまま、隣で話を聞いていた。
ほとんどの内容を、吉田の母が丁寧な口調で話し終えた。
「ん〜、で、何でご両親がついてくるの。」
問題は、吉田のことなのに、何か第三者的に話を聞いている30の半ばを過ぎた吉田に、少々、苛立ちを覚え、倉橋は吉田に言った。
「確かに、いちご煮を頂いたことはありがたいけど、もう独り立ちしたいい大人が、こんな話で両親を連れてこなくても、いいんじゃないの。」
倉橋の両親も健在で横浜に住んでいる。吉田の両親と倉橋の両親の顔がだぶり、倉橋の両親が懇願している姿のように倉橋には映った。
倉橋は、今後の解決に向けての方向性を、概ね両親と吉田に告げ、「本件を引き受ける条件があります。」倉橋は、吉田に向かっていった。
「吉田さんは、両親に借りた金は必ず返すこと。報酬は、分割でもよいから、吉田さん自身が払うこと。そして、今後、一切、両親を巻き込まないこと。」
倉橋は、両親の目の前で、吉田にきっぱりと言った。
「はい。先生の言うとおりにします。」
弱々しい声で、吉田がいうと、吉田の母の目に、薄っすらと涙が浮かんでいた。
・・・続きは、後日、お届け致します!
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2005年05月21日
不動産コンサルタント始末記 5
第5話 脅迫
「おい、吉田はいるか。」
ある日、役場の受付に、柄の悪い男から電話が入った。
「お前の所の役場では、役人は借金を返さなくていいって教育してんのか!
責任者、出せや!」
「課長、た、たいへんです。」
電話に出た受付の女性が、大声で課長を呼んだ。
「吉田さん宛で、暴力団のような人が騒いでいます!」
さほど広くない役場に、女性の声が響き渡った。
運悪く吉田は外出中であった為、課長が電話に出るしかなかった。
「はい、お電話代わりましたが。」課長は、丁寧な口調で電話に出た。「あいにく、吉田は外出中ですか。」
「あんた、誰?」相手の男は、課長の立場を確認し、
「おたくの部下、吉田っていうの、いるよね。公務員の癖して借りた金、
返しませんねん。あんた、上司なら上司らしく、きつく叱ってもらえませんか。」
関西訛りの言葉で、神経を逆撫でするように課長に言った。
「役場の町長さんは、親も同然、あんた課長さんは、兄貴も同然や、な、仮に吉田が借金返せなんだら、兄貴や親が面倒見る、これが正しい姿や。」
妙な理屈をつけ、最後に「明日まで待ったるわ。万一、明日までに耳を揃えて返済しなければ、役場、乗りこんどるさかい、覚悟しいや。」
低い声で恫喝し、電話を切った。
課長がうな垂れて電話を切ると、一瞬、役場全体が静寂に包まれた。
その日、吉田は、課長と係長に呼び出され、今後の方針などを問いただされたが、吉田自身、既に消費者金融業者数社に400万円を超える借金を抱え、どうしてよいか分からない状態であったし、不当な金融業者からの夜中までいたる、矢のような催促に疲れ果てていた。
更に、昨日、吉田の家の前には、猫の死体が投げ込まれ、玄関の扉には「死ね!」と書かれた紙が貼られていた。
吉田自身、本当に死ぬしかないのかな、などと考えるようになっていた。
その夜、吉田は、久しぶりに実家へ電話をかけた。
別に、お金を無心するつもりではなく、死ぬ前に、一言、母の声が聞きたかった。
「浩、お父さんには話してあるから、お金、どうすればいいか教えてちょうだい。」
吉田は、何も言っていないのに、突然、母は言った。
「えっ、何のこと。」
吉田は、とぼけようと努力したが、言葉が詰まったまま声が出ず、結局、泣き出してしまった。
きっと消費者金融の連中が、両親にも執拗に電話をかけていたに違いない。
そんなことを考えると、本当に自分など死んだほうがよいのではないかと泣きながら考えた。
「母さん.....、死にたい。」
「何を馬鹿なこと言うのよ。しっかりしなさい。」
母は、毅然と吉田に言った。
「お父さん、別に怒ってないわよ。」
子供の頃、何かにつけて厳格な父に怒られていた吉田を、いつも母は、こんな言葉で慰めていたことを思い出した。
そして母は、「お金のことは、心配要らないわ。お父さん、学校辞めちゃったから。」と翳った口調で言った。
吉田はしばらく、受話器をもったまま泣き崩れた。
翌日、母は、吉田の銀行口座に500万円を振り込んでくれ、消費者金融の返済はすべて片付けることができた。
このお金が父の退職金の一部だと考えると気が重かったが、逆に、早く決着をつけなければならないという勇気のようなものも感じていた。
「戸塚さん、いらっしゃいますか。」
吉田は、どうしてよいか分からず、友人の戸塚に電話をかけた。
戸塚は、とある不動産業界雑誌の記者をしており、彼に相談すればよい解決方法が見つかるのではないかと考えたのである。
「はい、戸塚ですが、吉田さんって、どちらの吉田さん。」
ぶっきらぼうに電話に出た戸塚は、面倒くさそうな口調だった。
吉田は、戸塚に、一連の話を洗いざらい話した。
また戸塚は、権藤のことも良く知っていたから、ひょっとすると消息も分かるのではないかと、若干、期待もしていた。
「お前、馬鹿だよな。」概ね話を聞いた戸塚は、吉田に言った。
「買う前に、相談しろよ。」
言われてみればそうである。
同じ東京で戸塚は、不動産業界誌の記者として働いているのである。
「権藤の会社ったって、バブルの頃は威勢は良かったけど、お前がこのマンション買ったときは、半ば休業状態。松本って言ったかな、あそこの社長。この頃は、借金取りに追い立てられてたんじゃないの。」
さすがに記者だけあって、情報網はすごいと思った。
「で、どうしろっていうの。」
「俺、このマンション、どこにあるかも知らないし、いま、いくらで売れるのかも分からない。」
吉田は、戸塚ならきっと力になってくれるような気がした。
「実は、どうしていいのかも、分からないんだ。」
「そんなこと言われても、おれ、記者だしな。」
しばらく考えてから「そういえば、先日、取材した会社の社長、変わってるから相談にのってくれるかも知れないなぁ。」
戸塚の頭の中に不動産コンサルタントの倉橋の名前が浮かんでいた。
「この社長、他の出版社からだけど、あっと驚く不動産投資って本出しててさ、前は、賃貸トラブル110番っていうのも出していたから、結構、この手の話は相談にのってくれるかもな。」
戸塚は、倉橋の印象を大まかに話し、
「一応、おれ、掛け合ってやるから、結果を電話してやる。じゃあな。」
電話は切られた。
かくして、この事件は、不動産コンサルタントの倉橋のところに持ち込まれることになった。
・・・続きは、後日、掲載致します!
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「おい、吉田はいるか。」
ある日、役場の受付に、柄の悪い男から電話が入った。
「お前の所の役場では、役人は借金を返さなくていいって教育してんのか!
責任者、出せや!」
「課長、た、たいへんです。」
電話に出た受付の女性が、大声で課長を呼んだ。
「吉田さん宛で、暴力団のような人が騒いでいます!」
さほど広くない役場に、女性の声が響き渡った。
運悪く吉田は外出中であった為、課長が電話に出るしかなかった。
「はい、お電話代わりましたが。」課長は、丁寧な口調で電話に出た。「あいにく、吉田は外出中ですか。」
「あんた、誰?」相手の男は、課長の立場を確認し、
「おたくの部下、吉田っていうの、いるよね。公務員の癖して借りた金、
返しませんねん。あんた、上司なら上司らしく、きつく叱ってもらえませんか。」
関西訛りの言葉で、神経を逆撫でするように課長に言った。
「役場の町長さんは、親も同然、あんた課長さんは、兄貴も同然や、な、仮に吉田が借金返せなんだら、兄貴や親が面倒見る、これが正しい姿や。」
妙な理屈をつけ、最後に「明日まで待ったるわ。万一、明日までに耳を揃えて返済しなければ、役場、乗りこんどるさかい、覚悟しいや。」
低い声で恫喝し、電話を切った。
課長がうな垂れて電話を切ると、一瞬、役場全体が静寂に包まれた。
その日、吉田は、課長と係長に呼び出され、今後の方針などを問いただされたが、吉田自身、既に消費者金融業者数社に400万円を超える借金を抱え、どうしてよいか分からない状態であったし、不当な金融業者からの夜中までいたる、矢のような催促に疲れ果てていた。
更に、昨日、吉田の家の前には、猫の死体が投げ込まれ、玄関の扉には「死ね!」と書かれた紙が貼られていた。
吉田自身、本当に死ぬしかないのかな、などと考えるようになっていた。
その夜、吉田は、久しぶりに実家へ電話をかけた。
別に、お金を無心するつもりではなく、死ぬ前に、一言、母の声が聞きたかった。
「浩、お父さんには話してあるから、お金、どうすればいいか教えてちょうだい。」
吉田は、何も言っていないのに、突然、母は言った。
「えっ、何のこと。」
吉田は、とぼけようと努力したが、言葉が詰まったまま声が出ず、結局、泣き出してしまった。
きっと消費者金融の連中が、両親にも執拗に電話をかけていたに違いない。
そんなことを考えると、本当に自分など死んだほうがよいのではないかと泣きながら考えた。
「母さん.....、死にたい。」
「何を馬鹿なこと言うのよ。しっかりしなさい。」
母は、毅然と吉田に言った。
「お父さん、別に怒ってないわよ。」
子供の頃、何かにつけて厳格な父に怒られていた吉田を、いつも母は、こんな言葉で慰めていたことを思い出した。
そして母は、「お金のことは、心配要らないわ。お父さん、学校辞めちゃったから。」と翳った口調で言った。
吉田はしばらく、受話器をもったまま泣き崩れた。
翌日、母は、吉田の銀行口座に500万円を振り込んでくれ、消費者金融の返済はすべて片付けることができた。
このお金が父の退職金の一部だと考えると気が重かったが、逆に、早く決着をつけなければならないという勇気のようなものも感じていた。
「戸塚さん、いらっしゃいますか。」
吉田は、どうしてよいか分からず、友人の戸塚に電話をかけた。
戸塚は、とある不動産業界雑誌の記者をしており、彼に相談すればよい解決方法が見つかるのではないかと考えたのである。
「はい、戸塚ですが、吉田さんって、どちらの吉田さん。」
ぶっきらぼうに電話に出た戸塚は、面倒くさそうな口調だった。
吉田は、戸塚に、一連の話を洗いざらい話した。
また戸塚は、権藤のことも良く知っていたから、ひょっとすると消息も分かるのではないかと、若干、期待もしていた。
「お前、馬鹿だよな。」概ね話を聞いた戸塚は、吉田に言った。
「買う前に、相談しろよ。」
言われてみればそうである。
同じ東京で戸塚は、不動産業界誌の記者として働いているのである。
「権藤の会社ったって、バブルの頃は威勢は良かったけど、お前がこのマンション買ったときは、半ば休業状態。松本って言ったかな、あそこの社長。この頃は、借金取りに追い立てられてたんじゃないの。」
さすがに記者だけあって、情報網はすごいと思った。
「で、どうしろっていうの。」
「俺、このマンション、どこにあるかも知らないし、いま、いくらで売れるのかも分からない。」
吉田は、戸塚ならきっと力になってくれるような気がした。
「実は、どうしていいのかも、分からないんだ。」
「そんなこと言われても、おれ、記者だしな。」
しばらく考えてから「そういえば、先日、取材した会社の社長、変わってるから相談にのってくれるかも知れないなぁ。」
戸塚の頭の中に不動産コンサルタントの倉橋の名前が浮かんでいた。
「この社長、他の出版社からだけど、あっと驚く不動産投資って本出しててさ、前は、賃貸トラブル110番っていうのも出していたから、結構、この手の話は相談にのってくれるかもな。」
戸塚は、倉橋の印象を大まかに話し、
「一応、おれ、掛け合ってやるから、結果を電話してやる。じゃあな。」
電話は切られた。
かくして、この事件は、不動産コンサルタントの倉橋のところに持ち込まれることになった。
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