2005年05月19日
不動産コンサルタント始末記 4

それは、信じられない事態であった。
「どういう意味ですか。口座には、100万円以上入れてあったと思いますが。」
吉田は、ことの成り行きを理解できなかった。
権藤が、毎月15万円振り込んでくれており、ローンの支払いが13万円何某なのだから、当然、銀行口座には、お金が貯まって行く筈だと吉田は理解していた。
「とにかく、明日、調べてみます。」
翌日、昼間、役場を抜け出して銀行に行き、通帳の記帳をして、吉田は愕然とした。
権藤からの入金は6ヶ月で途絶え、その上、1月と7月には80万円を超える金額が引き落とされていた。後でわかったことであるが、この80万円強の引き落としは、ボーナス払いの返済であった。吉田は、準備しておいた権藤の名刺を見ながら、会社に電話をしてみたが、既に電話は止められていた。
また、かつて東京へ行ったときに連絡を取り合うために聞いていた携帯電話の番号にもかけてみたが、これも通じない。
仕方がないので、104番で会社名と住所を告げ、調べてもらったところ該当する会社は登録されておらず、住所違いのところに同一名称の会社が登録されているとのことであったので、念のためかけてみたが、松本という社員も権藤という社員も存在しないし、第一、不動産を取り扱っている会社ではないということであった。いずれにしても、銀行口座の資金が枯渇しているのだからと、他に定期で積んでいた預金を取り崩し、泣けだしの100万円を返済口座に入金して役場に戻った。
それから数日後、自宅に意味不明な書留郵便の不在通知が届いていた。
昼間は、役場に行っているため書留郵便は受け取れない。郵便局に連絡し、翌日、役場に届けてもらうことにした。
「吉田君。ちょっと来てもらえないか。」総務課の課長が執務室に吉田を呼びつけた。
「吉田君、僕はプライベートに立ち入るつもりはないんだが、こんな書類が届くというのは、やはり管理者の立場としては放って置くわけにはいかないからね。」
「何のことですか。」吉田は、まったく課長の言うことが理解できず、聞き返した。
「その書類って、何ですか。」
「だって、これは君宛に送られてきた内容証明郵便じゃないか。」封筒を吉田の目の前に放るように投げ、「内容証明郵便とは、穏やかな話ではないだろう。何かトラブルがあるなら話してみたまえ。」
「いやぁ、別に思い当たる節はありません。」
吉田は、その封筒の差出人を見たが、まったく差出人に心当たりはなかった。
「やはり、心当たりはありません。」
吉田は、かかる誤解を取り去るために、課長の目の前でその封筒を開封し、中身を読んだが、読んだ瞬間に後悔した。
それは、購入したマンションの管理会社からであり、管理費の滞納の督促通知であった。
「吉田君、何で横浜のマンションの管理会社から君宛にこんな通知がくるんだね。」
それは、明らかに疑惑の目であった。
「いずれにしても、君は公務員だ。誤解の起きるような行動は慎みたまえ。」
吉田は、いろいろと言い訳を考えていたが、課長は、自らがトラブルに巻き込まれたくはないという表情で、さっさと執務室から出て行ってしまった。
しかたなく吉田は、その差出人である管理会社に電話をし、事情を話した上で20万円を超える管理費の滞納額全額を一括して支払った。
毎月13万円以上の返済に、管理費が1万円強、それにボーナス月には80万円以上の支払が加算される。
吉田には、既に蓄えはなく、途方にくれた。
「吉田さんのお宅ですか。」ついにきた、と吉田は思った。
「誠に恐れ入りますが、銀行の口座に残高が不足してまして。」ファイナンス会社の社員は、丁寧な言葉で吉田に言った。
「わ、わかりました。明日、必ず入金します。」
ことの成り行きを予測していただけに、あせりは募った。
電話を切って、以前、DMで届いていた別のファイナンス会社のパンフレットを手にし、ここは当面、借入で賄わなければならないと考え、勇気を出して電話してみることにした。
電話の向こうでは、親切そうな担当者が親身になって話を聞いてくれ、借入の条件等を説明してくれた。金利は40%を超えるものであったが、ボーナスも間近いことから、とりあえず20万円だけ借りることにした。
賃料収入は一切なく、役場の薄給では、結局、この無謀な借金など返せる筈もなかった。
・・・続きは、後日、掲載します! お楽しみに!
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